ヘル・レイザー
ラリー・コットンの兄フランクは数年前忽然と姿を消した。
ラリーは再婚相手であるジュリアと、兄が残した家に移り住むことになる。
娘のカースティ・コットンは継母と馬が合わず、一人暮らしを始めた。
ある日のこと、カースティは父から「ジュリアの様子がおかしい。たまに家に来てジュリアの話し相手になってくれないか。」と頼まれる。
家を訪ねることにしたカースティは、ジュリアが自宅に男を連れ込んでいるところを目撃した。
程なくして男の悲鳴が聞こえ、家に乗り込んだカースティは死んだはずのフランクに遭遇し……?
バランスが良い作品だと思いました。
ゴア表現に集中してストーリーがなかったり、逆にストーリーに凝って怖いシーンが少なかったり(それらはそれでそういうジャンルの映画だと思いますが)ということはありません。
ルマルシャンの箱、セノバイトといったカチッとした設定の上にジュリアとフランクの共謀といった物語がのっかり、原作小説があるというだけあって話が面白いです。
しかし、テーマは「快楽の源となる苦痛、拘束と恐怖のもとでの道徳性」であるそうですが、それはあまり伝わってきませんでした。
人間達はただセノバイトや苦痛を恐れていて快楽を感じている様子がありません。
だから単に箱を開けたら異世界から怖い人たちがやってくるだけの話のように見えました。
シリーズ物ということでセノバイト達については次作以降に掘り下げられていくのですが、この映画単体で見るとセノバイトや異世界についての描写が少なく、謎が多いままになっています。
ホラー表現については、低予算だったらしく手作りっぽさが否めないところがあります。
絵画の少女の目がアップになるシーンや点滴を逆流する血液などの不気味演出は素敵でした。
しかし、フランクに追われているカースティの背後から口にウジが湧いた死体が出てくるところはチープで緊迫感を削ぎました。
あと、光るエフェクトも(当時の技術的に仕方ないのかもしれませんが)安っぽく見えました。
逆に、フランクの復活シーンなどはSFXでないと出せない触れそうな怪物感が素晴らしく、古い特撮が好きな方は楽しく鑑賞できるのではないでしょうか。
セノバイト達のデザインも秀逸で、特にピンヘッドは一度見たら忘れられないインパクトです。
また、コットン夫妻が引っ越したフランクの家もいい雰囲気でした。
実在の家を利用したためセット感がなく、いかにも何か出そうな古ぼけた内装がホラー映画に適しています。
家が丸ごとあるからかカメラワークの制約が少ないようで、カースティとセノバイトを同じ画面に収められなかった終盤と比べると特に前半はカメラワークも優れていると感じました。
演技についてはラリー役の俳優の、ラリーとラリーの皮を被ったフランクの演じ分けが素晴らしかったです。
ラリーの時は優しいお父さんで、笑っていなくても人の良さそうな表情をしていましたが、フランクになるとツーンとした顔ですわった目がとても怖かったです。