びぃずの映画な日常

映画の感想を書きます。あくまで個人的な感想ですので悪しからず。

ハスラーズ

祖母を養うためストリッパーとなったディスティニーはトップダンサーとして活躍するラモーナと出会い親交を深めていく。

初めは冴えないデスティニーだったが、仲間達の手ほどきを受け、仕事は充実したものに。

しかし2008年のリーマンショックで状況は一変、彼女達にも不況の波が押し寄せた。

「人々は苦しんでいるのになぜ経済危機を引き起こした金融マン達は変わらずに豊かな暮らしを続けているのか?」

ラモーナは彼らからお金を騙し取ることを企てる。

ことは順調に運び裕福な生活を取り戻した彼女達だったが、次第に詐欺行為はエスカレートしていき……?

 

 

主演の一人のジェニファー・ロペスには歌手のイメージがありました。

しかしデビューアルバムは30才くらいになってからなので、女優としてのキャリアの方が長いんですね。

あと歌手デビュー前にジャネット・ジャクソンのバックダンサーもしていたからダンサーでもあるらしい。

登場シーンのポールダンスが迫力満点でインパクト大でした。

カリスマ性抜群のポールダンサーの役がハマっていたと思います。

内容については、観るまでは予告編の印象から悪い金融マンから金を巻き上げるアンチヒーロー的な映画かと思っていましたが、実際は青春映画のようでした。

テーマは“友情”でしょうか。

それと、デスティニーが言っていた「傷ついた人は人を傷つける。」も。

クライム映画という分類になるのかもしれませんが、犯罪がどうこうというストーリーではないように思いました。

いい悪いの問題ではなく負の連鎖であって、ストリッパー達が金融マンをとっちめる話でもストリッパーが悪いという話でもない。

そしてその負の連鎖は友情をも破壊する。

見ていたら若い頃のことを思い出す人もいるかもしれません。

仲間達とゲラゲラ笑って謎の一体感があって、精神の深いところで繋がっているような子供の頃の感覚が蘇るようでした。

(一般的には若い頃に限らないかもしれませんが個人的には昔のことを思い出しながら見ていました。)

ストリップだとか犯罪だとかガワは抜きにしてエッセンスだけなら共感できる人も多いのではないでしょうか。

結構普遍的なものを描いていると思います。

やはり、人が何人か集まると状況によって問題が発生して仲がこじれて……ということがあると思います。

それも含めて友情ですし、最後に変に更生を強調したり記者を正義のペンのように描いたりせずに、ラモーナがデスティニーの写真を大切に持ち歩いていることをラストに持ってくるのがブレていなくていいと思いました。

一観しただけだと、ストーリーが特に破綻したり主題から逸れたりということはなかったように思います。

ラモーナの、母親であることに関する発言が最後に効いてきて感心しましたし、煌びやかで荒れた世界を描いてる割には堅実な脚本であるように思います。

(物語の序盤で絶好調な時のラモーナが「母親はクレイジー」と発言します。

そんなラモーナも犯罪に手を染めて荒んでいって、しまいには娘のために取引に応じるデスティニーに掴みかかるのですが、その時に自分の「母親はクレイジー」発言を思い出して我に返りました。

そこが上手いと思います。)

ラモーナが徐々に荒れていくのもまた、上手く描かれていたと思います。

お金を騙し取るのも最初は結構順調なのですが、雑に仲間を増やしたり犯罪行為のエスカレートについていけなくなって仲間が去ったり、段々ラモーナもチームもおかしくなっていきます。

破滅の仕方も秀逸でした。

相手をよく見ず即席で作った仲間であるドーンと、客でありながらデスティニー達と友人同士のような関係を築いていたダグ。

ドーンを引き入れたこともダグを裏切ったことも友情を軽視する行為でありその二人にチクられてラモーナ達は逮捕されることになりました。

いずれも友情の軽視が破滅に繋がっているのです。

この二人は小道具も交えて表現されているなど、段階的にも重要なポイントとして描かれていました。

デスティニーはクリスマスにラモーナが着ていたのとそっくりなコートをもらうのですが、ラモーナがドーンを仲間に引き入れようとするシーンを最後にデスティニーはコートを着なくなります。

コートは、デスティニーが屋上でラモーナのコートにくるまるところから二人の友情を表す小道具として効果的に使われていました。

ダグも、ダグを裏切ったことをきっかけに、なんだかんだデスティニーには優しかったラモーナがデスティニーに暴言を吐く事態に陥ってしまいます。

“友情”を主軸にして傷つき傷つけ負の連鎖が表現されています。

他にいいと思ったところはディスティニーが記者にインタビューを受けている形で物語が進んでいくところです。

最初は余計だと思っていました。

しかし、デスティニーとラモーナの関係性をしっかり描くために出会った頃から友情が破綻していくところまで順を追って語られていくため、インタビューを受けている体でないと性急に感じられてしまうと思います。

実際にも、人に話すのであれば数年単位の出来事でも適当に端折って話します。

そのため、数年の出来事を二時間以内にまとめてもあまり忙しなく感じませんでした。

更に、ラモーナと疎遠になってからも月日が経ってるのでラストシーンが効いてきます。

あと、記者に話している現実の時間軸を挟むことで、ラモーナとの関係が拗れることを早い段階で出せていたのも良かったと思います。

一つは、「今のところ仲良いのに二人はどうなってしまうんだろう。」と観客に思わせることで注意を引くことができます。

もう一つは、そのままストーリーを追うのでは友情が破綻してから和解(?)まで間が少なくなるのでインパクトが薄れてしまいますが、早い段階で二人の疎遠を受け手の頭に入れておくことによってラストシーンをより印象付けることができます。

逆に、よくないと思ったところはポスターにでかでかと載ってる割にはカーディBやリゾの登場シーンが少なかったことでしょうか。

カメオ出演であるわけですが、正直ちょっと残念。

事情を知らない人は違和感を覚えてしまうでしょう。

あとは、あまり革新性が感じられなかったところです。

ほとんど“男性の恋愛相手”としてしか表現されない女性を、男性との関係抜きで表現したのは革新的であるかもしれませんが、それ以外のところは特に新鮮さがありません。

「女性版グッドフェローズ」という感想がよく聞かれますが、まさにそれで、今まで男性でやっていたことを主要キャストを女性にかえてなぞっただけに見えます。

確かに、創作物に溢れ、出尽くし感がある昨今で全く新しいものを作れなんて無茶言うなよという感じですが、もう一押し欲しいなとも思いました。

丁寧に作られてるとは思いますが、良作の域を出ないかもしれません。